ある日僕はとても良い名前を思いついた。
それは清々しくて、凛々しくて、僕が本当に大事にしてもらいたいことを込めた名前だ。妻の妊娠が分かってからずっと悩んでいた名前問題に答えがでたことに満足し、その名前を妻に伝えようと病院へ向かった。妻は切迫早産で入院していた。
子宮収縮を抑える点滴に繋がれた妻は痛々しい。薬の副作用で怠そうだ。妻が入院して2ヶ月、精神的に支えとなっていた妻が入院したことは大きな痛手だった。重い足取りで妻のベッドサイドに座る。
うつ病診断後、退職し、静養、同業他社へ転職し働いていた頃だった。毎日何とかフルタイムで働いていたが、疲れは抜けきれず疲労困憊していた。仕事ではミスが目立っていた。うつ病であることを知っている上司によりミスは修正され問題はなかったが、ミスが増えることはうつ病が悪化しつつあることを示すサインであることを僕は経験上知っていた。ヤバい。仕事のあとに妻の病室に顔を出し、家では一人。朝も晩も買い込んだカロリーメイトとビタミン剤だけを食べて、家ではひたすら横になって休む。
うつ病悪化、妻入院という薄氷の上を歩くようなギリギリの生活を送っていたところに、妻の母が遠方から応援に来てくれた。本当に助かった。
37-8週を越えたころ、いつ陣痛が来ても良いでしょうと退院の許可が下りた。
妻の母の助けもありしばし平穏な時を過ごしたある朝、産まれていたのである。玉のような男の子が。
続く