息子は目がいい、虫を見逃さない。
そして網で捕まえる。
「可愛そうだから逃がしてあげようよ」
「いやだ、飼いたい」
飼いたい飼いたいと泣くので飼育を始めるのだが、特に詳しくもない僕なので何と言う名前の生き物で検索したらいいか分からない。数日内にそれの名前を特定できなければ、適切な飼育ができず死なせてしまう。そんな捕まえたそれの生死のかかったデスゲームが連日開催された日々があった。
寝ている間にそれを逃がすなどという無碍なことはできなかった。
DAISOで飼育ケースを大量に買い、部屋のラックにずらりと並べ、並行して図鑑でネットで検索しまくった。でも本当は全部投げ出して寝たかった。だってうつ病だから。
バタバタとそれらが倒れていく中、かろうじて生き残り寿命を全うしたそれも結構いた。
それが寿命を全うしたときは悲しいながらも達成感もあり。
生き物を捕まえる楽しさ、生き物によって違う飼育環境や餌の奥深さよ。休日に一緒に公園へ森へ川へ捕まえに行くことも多くなった。疲れるけど健康的で充実していた。
「よし、今日も捕まえに行くか!」
「いや、もう行きたくない。家でブロックしたい」
「お父さん捕まえたいから付き合ってよ」
「いや、もう大丈夫」
飼育デスゲームは唐突に終わりを迎え、その日の内に捕まえたそれらの生き残り全員を逃がしてあげた。