うつパパ育児

うつパパ育児

うつ病のパパが綴る子育て生活

「僕もいつか家を出て働くんだよ」

妻はこどもに色々教える時に、「君がいつか大人になって家を出る時がくる。その時に困らないように厳しく教えている」と息子に言っていた。

 

ある日息子が

「いつか僕は家を出て働いて結婚するんだよね」

と言ったら、妻は寂しくて泣いた。

その後、「小学生になったときに困らないように厳しく教えている」に変わった。

夜寝る前のお父さんの言葉を信じてはいけないよ

夜、睡眠薬を飲んで1時間経ったくらいから僕は夢遊病のように行動する。

妻の話を聞くと、ものにぶつかることもなく歩き、特に眠そうな様子もなく、いつもどおり普通に受け答えをしているらしい。「うん、わかった」「それでいこう」などと言っているが、翌朝そのことは覚えていない。

翌日言われて思い出すこともあれば思い出せないこともある。

ちゃんとベッドにたどり着いて寝ることが多いが、おもむろに台所や廊下で寝始めたこともある。

息子が手を引いてベッドまで連れ行ってくれたこともある。

もちろん覚えておらず、翌朝に言われて思い出す。

 

ある夜、息子が

「お父さん、アイス食べても良い?」

「うん、いいよ」

一緒に食べて歯磨きをしてベッドで寝た。

翌朝息子に言われて思い出して、

夜寝る前に甘いものを食べたらいけない。夜のお父さんは寝ぼけているからそのときの言葉は信じたらいけないと伝えた。

でもその後、似たようなことが3回くらいあって、

良心が咎めたのか言わなくなった。

いやきっと飽きたんだろう。

「おとうさん、うつびょうってなに?」

唐突にきた。

自分でも驚くほど不思議なことに、これに対する返答を準備していなかった。

我が家ではうつ病という言葉はこどもにはなるべく聞かせないようにしていた。小さなこどもでは理解するのも難しいだろうし、よく分からないまま使って欲しくない言葉だから。大人だって十分理解するのは難しい。しかし自然と耳に入ってくるものだ。どう答えたものかなと少し悩んで、

「疲れやすいってことだよ」

と答えた。

ふわっとした答えだがだいたい合ってるはず。

「ふーん」

そんなに興味はないようだ。それ以上聞いてくることもなく、遊び始めた。

辛かった色々なことを話すにはまだ早い。

あの特に症状がひどく動けなかった数年間、薄暗い部屋で訳の分からない憂鬱と焦燥感でベッドに縛り付けられた僕を救ってくれたのは、散歩に行こうと手を握って玄関から引っ張り出してくれた小さな小さな君だったんだと、いつか伝えられたら良い。