仕事でミス乱発。早退することもあった。朝目覚めると体が重く、突発的に有休を取るようにもなっていた。その有休ももう無くなりかけていた。上司とともに通院している病院へ行き、休職することになった。
前職から数えて通算3度目の休職。
期限はあるが休職中も給料は出してくれるとのことで、それはありがたかった。経済的な不安はうつ病患者を悩ませる最大の心配事だから。
ベッドに寝て、僕は天井を見ていた。
体が動かない。常に緊張しているせいか背中も痛い。焦燥感に駆られ、自己嫌悪に陥る。いつ良くなるかは分からない、良くなる保証もない。
僕はうつ病という鎖に繋がれて、家から一歩も外へ出ることができなくなった。
ただ、前職の2回の休職と違うことがある。赤ん坊だ。
ベッドから這い出し毎日我が子を抱く。今日も可愛い。僕はひと安心する。それは僕の中に感情が残っていることを示すモニターであった。
僕の状況などお構いなしに、息子は笑い、遊び、泣き、眠り、僕の顔を触り、横になっていれば体をよじ登り、そして信頼を寄せてくる。僕がうつ病であることなど、この子にとってはどうでも良いことなのだ。そこには当然ながら共感も慰めも励ましもないが、居心地がよかった。
休職にはなったが、その間我が子の成長を見守ることができたことは本当に良かった。初めてつかまり立ちをしたときには妻とともに喜んだし、僕の方へよちよち歩いてくる様子も可愛かった。息子をあやそうとアレやコレやと試したり、おもちゃを買おうと選んだり、育児のために本を読んだり部屋を改造したり、今考えれば自然と頭のリハビリになっていたのではないかと思う。息子が笑い、僕も笑う。妻も笑っている。
うつ病による虚しさ、心にぽっかり空いた穴を我が子が少しずつ埋めてくれた。
6ヶ月が経ち、僕の体調は少しずつ良くなっていた。
続く